ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Audio Review

- 最新号 -

AUDIO REVIEW

ダリ EPIKORE エピコアシリーズ

EPIKORE(エピコア)9
¥2,750,000円(税込・1台)※ペア販売品
問い合わせ先=ディーアンドエムホールディングス
http://dm-importaudio.jp/dali/lineup/speaker/epikore/index.html

 KORE(コア)はダリの新世代のテクノロジーを満載したスピーカーだった。それをレギュラーラインに順次下ろしているわけだが、2022年にまずEPIKORE(以下エピコア)11を発売した。事情は割愛するが、下位シリーズのルビコアを挟み、最近エピコアの残り3つのモデルが発売された。価格はエピコア9が500万円、7が320万円、3が200万円(いずれもペア)。スタンドはペアで48万である。エピコアがダリの本命であることは、コアで開発したドームトゥイーター35mmドームとリボントゥイーターのドライブユニットがそっくりそのまま同じものが入ったことからわかる。ただしダリは今年からリボンという呼称をやめてプレーナー型に変えている。下位のルビコアでは高さを抑えるためにブックシェルフにハイブリッド型トゥイーターを使わなかったが、エピコアは全機種ハイブリッドを採用した。
 ウーファーも見所満載である。コアから始まった幾何学模様がコーンにほどこされ、かれらはクラリティコーンテクノロジーと名付けている。ウーファーを高い周波数まで引っ張って使う時に分割共振をコントロールするためにあえて窪みを作っている。ボイスコイルのワイヤーはエッジワイズ巻き。ウーファーで角形断面の一層巻き線を用いたのはダリとして初めて。ボイスコイルボビンはひじょうに強力なチタンを使っている。
 これもコアからだが、ダリのパテントで磁気回路のボイスコイルに隣接する所、ボイスコイル内側の黒い個所、磁気回路のヨークにあたる通常は鉄で作る個所に、鉄粉の表面を絶縁処理して固めたSMC磁気回路を使っているが、エピコアではコアと同じ第二世代SMCを使っている。もともと絶縁性高いが第二世代は電流がほとんど流れないという。渦電流が減ればそのぶん歪みが減るわけでコーン型ユニットにはSMC G2が使われている。
 エンクロージャー(キャビネット)はレクタンギュラーでなく水滴型で、MDFで作られている。3モデルとも板材に同じものが使われ、バッフル板は基本40mm厚のMDFをゆるくラウンド加工して使っている。前が厚くひじょうに重い。興味深いのは、箱を作ってから突き板を貼る「あと張り」。貼った板を組み合わせて箱を作らないので木目に切れ目がない。なかなか手貼りは難しく箱を作ってから手貼りで仕上げるダリの木工技術は本機のもうひとつの見所である。
 ダリの新しい顔のエピコアだが、センタースピーカーやサテライトは発売されない。まったく計画がないわけではないようだが現状で予定がなく、それは自信の表れである。従来、ダリは中間グレードのメーカーだったが、プレイバックモニターの品位を持ちリファレンスグレードのエピコアでB&W800系の好敵手に名乗りを上げた。エピコアの登場でハイエンドスピーカーの版図に少なからず変化が生じることは間違いない。(大橋伸太郎)