- 最新号 -
ALBUM Review
Bianca Rossini
I’VE BEEN ALONE
biancaworld@gmail.com
ビアンカ・ロッシーニは、リオ・デジャネイロ生まれ、10歳からロスアンジェルスに移り活躍するシンガー、ソングライター、映画テレビ俳優、ダンサーで3冊の本の著述家としても忙しく活躍しているアーティストだ。音楽業界が、CD.LPからデジタル、ストリーミングの時代へと変わって来た為、今回は、ダウンロード・オンリーの作品を発表した。彼女は、今迄、アルバム3枚: 「 Apaixonada」 ,「 Vento do Norte」,「 Kiss of Brasil 」とEP2枚、シングル3枚を出してきている。ポルトガル語の作品が多かったが、今回の作品「I’ve Been Alone」は、初めて全曲英語で歌うもので、曲もすべて彼女自身が録音前1週間で作ったものだという。伴奏陣は、ピアノ・キーボーズは、Ricardo Rito, Luiz Otávio, Peter Robertsが入れ替わりで担当、ギターはPeter Roberts、ベースは、Sezin Turkmenoglu、ドラムスをElberton Paixãoが担当していて、一部にストリングも入っている。彼女は、ダンサーでもあるためか、全体的にドラムスが活躍、ビートに乗って躍動感のある歌を聞かせる。失われた恋の嘆きや男女関係の綾を歌い相手に訴え掛けるようなものが多い。中でもブルーな雰囲気一杯のタイトル曲や「おぼえていますか?」という「Do You Remember」が面白い。言葉の繰り返しが多いのも彼女の歌の特徴だ。これらのナンバーをしなやかな声で歌う現代的なアーティストの印象的な作品だ。(高田敬三)
ALBUM Review
Ella Fitzgerald
The Moment Of Truth Ella At The Coliseum
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エラ・フィツジェラルドの1967年6月30日にカリフォルニアのザ・オークランド・コロシアムで行われたコンサートのノーマン・グランツの遺品の中で見つかった今迄未発表だったライヴ録音。エラは、彼女のレギュラー・トリオ、ジミー・ジョーンズ(p)ボブ・クランショウ(b)サム・ウッドヤード(ds)とエリントン御本人を除くデュ―ク・エリントン楽団をバックに歌う。サム・ウッドヤードは、エリントン楽団のドラマーでもある。このコンサー トの特徴は、タイトルの「The Moment Of Truth」を始め60年代の新しい曲を取り上げているところだ。この歌は、63年にトニー・ベネットが初めて録音して、エラも以前、歌っている。続くベニー・グッドマンで有名な「Don’t Be That Way」は、通常よりスローなテンポで歌い意表を突かれる。珍しいヴァースから歌うバラード「You‘ve Changed」も大変印象的だ。ヴァースから歌うコール・ポータ―の「Let’s Do It」では、ビートルズ、アニマルズ、ソニー・アンド・シェールなど当時のポップ・シンガーの名前を織り込んだりして快調に聴かせる。聴衆の反応に応える言葉も面白い。「Alfie」や日本では「恋はリズムに乗せて」で流行った1967年のヒット「Music To Watch Girls」は彼女が初めて歌うナンバーだ。お得意のスキャットを交えてスイングするエリントン・ナンバー「In A Mellow Tone」や「Mack The Knife」のお馴染みの曲も含め9曲をエリントン楽団をバックに歌うエラの絶好調と云えるステージを楽しめる。古いテープから最新技術で音が再現されてはいるが、更に良い音で聞いてみたくなる素晴らしいコンサートだ。(高田敬三)
LIVE Review
東京文化会館「プラチナ・シリーズ第3回 大西順子~シーンを牽引し続けるジャズピアニスト~」
1月24日 東京文化会館 小ホール
トリオ、カルテット、オーケストラなどさまざまなフォーマットで活動を続ける大西順子は、ここ数年、無伴奏ソロ・ピアノにも積極的に取り組んでいる。だが、ソロ・ピアノ・アルバムはいまだ発表されていない。つまりライヴに行かなければ彼女のソロ世界に浸ることはできない。東京文化会館への登場は今回が初めてとのことだが、チケットは早々とソールド・アウトに。いかに多くのファンが大西のソロ演奏を楽しみにしていたかがわかる。演奏曲も抜群にセンスがいい。“一歩先も予測できない嬉しさ”を存分に感じさせてくれた無題の前衛的なオリジナル曲から始まり、ハサーン・イブン・アリ作「オールモスト・ライク・ミー」、ジェリ・アレン作「ホエン・カブヤ・ダンシズ」など、“わかるひとには良さがしたたかに伝わってくる”ナンバーをゴリゴリに演奏するかと思えば、「スターダスト」や「この素晴らしき世界」など人口に膾炙したナンバーも軽やかにとりあげて、なんというか、押しと引き/辛口と甘口のバランスが絶妙で、あれよあれよという間に約2時間が経過した。(原田和典)
PHOTO:©飯田耕治
LIVE Review
アニーサ・ストリングス
1月30日 ビルボードライブ東京
アニーサ・ストリングスは、ウッド・ベースとエレクトリック・ベースの双方をハイレベルで弾きこなし、ヴォーカルにも魅力を発揮する若手ミュージシャン。ベタな言い方をすれば、ポスト・エスペランサ・スポルディングのひとりということになろうか。2020年にホセ・ジェイムズのバンドでやってきたことはあるが(Aneesa Al-Musawwir名)、リーダーとなった来日公演は今回が初めてだ。同行したのは、やはりロサンゼルスを拠点とするキーボード奏者のブランドン・コルドバ、ドラマーのウェイン・マシューズという気鋭たち。アニーサはセンターに位置し、ほぼ1曲ごとにMCをはさみながらステージを進めていく。“あくまでもメインはウッド・ベース。ロドニー・ウィテカーに奏法を学んだ”というだけあって、ビートも、ラインの組み立て方も骨太で抜群に安定感がある。3月発売のEP(つまりライヴの時点では出ていなかった)『The Calm』からのナンバーなど自作主体のプログラムの中で、マックス・ローチとオスカー・ブラウンJr.の古典『ウィ・インシスト!』から「フリーダム・デイ」を、しかもハラー(holler)を交えつつ届けたのには目の覚めるような思いがした。(原田和典)
PHOTO:cherry chill will.
LIVE Review
AMEFURASSHI Live「Sweetie, Lovely, Yummy!」
2月11日 TOKYO DOME CITY HALL
AMEFURASSHI(アメフラッシ)は、2018年結成の4人組グループ。「老若男女問わず幅広い世代、外国の方やアイドルを好きになったことがない方」も考えに入れた間口の広い芸風、フレンドリーなキャラクターで人気を集めてきた。が、音的には尖ったところも十分にあり、私にとって最新アルバム『Flora』は「“イントロ→AメロBメロ→サビ→間奏→落ちサビ→エンディング”的な古典的フォーマットに頼ることも、ファンがコールを入れるようなスペースを特に置くこともなく、1曲あたりの時間を2~3分台に凝縮しつつ、ゴリゴリにビートを強調しながら、同時に、いかにアイドルソングとして成立させていくか」に留意した意欲作でもある。このコンサートでは『Flora』からのナンバーを織り交ぜつつ、「轟音」や客席を練り歩きながらの「バカップルになりたい!」など初期の楽曲、さらに新曲「Sweetie, Lovely, Yummy」など計25曲をパフォーマンス。AMEFURASSHIの多彩な楽想を味わうことができたとともに、子供から大人まで、オーディエンスの誰もが本当に楽しそうに体を揺らしている様子に胸のすくような気持を得た。(原田和典)